ショート動画制作を依頼するときは、目的、素材、撮影、媒体別の納品仕様、権利、修正、承認、予算・日程を一枚にまとめます。最初から完璧な仕様書にする必要はなく、未決事項は「制作会社から提案希望」と明記すれば相談を始められます。
要件が曖昧なままだと、制作会社ごとに見積もりの前提が変わり、金額や納期を比べにくくなります。反対に、目的、素材、撮影、権利、修正の条件が見えれば、未決事項が残っていても相談は始められます。
この記事では、ショート動画制作を依頼する前に整理したい8項目、架空の記入例、送付前のチェックリストを紹介します。
この記事の目次
先に結論|8項目を一枚にまとめる
依頼前の要件定義は、次の8ブロックで整理します。
| ブロック | 決めること | 未決なら書くこと |
|---|---|---|
| 目的 | 認知、問い合わせ、採用など | 解決したい事業課題 |
| 素材 | 商品情報、ロゴ、写真、既存映像 | 制作側に用意してほしい素材 |
| 撮影 | 場所、日時、出演者、機材 | 候補と調整担当 |
| 納品 | 本数、尺、媒体・用途別の比率、形式、字幕、カバー | 投稿先と希望だけでも可 |
| 権利 | 出演、場所、音源、二次利用 | 想定する媒体・期間 |
| 修正 | 回数、段階、追加費用条件 | 社内確認に必要な日数 |
| 承認 | 確認者、最終決裁者、禁止表現 | 部門別の確認事項 |
| 予算・日程 | 予算枠、公開希望日 | 優先する条件 |
POINT 空欄は「おまかせ」にせず、「制作会社から提案希望」と書きます。決めたことと提案を求めることを分けるだけで、見積もりの前提が揃いやすくなります。
目的は「誰に何をしてほしいか」まで書く
「商品を紹介したい」だけでは、企画や尺を判断できません。次の順で書きます。
- 対象者:どのような状況の人か
- 変化:動画を見て何を知り、どう感じてほしいか
- 行動:商品ページ、問い合わせ、応募など、次に何をしてほしいか
- 掲載先:TikTok、Instagram Reels、YouTube Shorts、広告など
- 確認指標:視聴、遷移、問い合わせなど、何で振り返るか
施策全体の目的やKPIから整理したい場合は、ショート動画マーケティング戦略の立て方も参照してください。
素材と撮影は「誰が用意するか」を決める
素材は有無だけでなく、提供者、期限、利用可否を一覧にします。
| 素材 | 有無 | 提供・作成担当 | 確認事項 |
|---|---|---|---|
| 商品・サービス資料 | あり/なし | 発注側/制作側 | 最新版、公開可否 |
| ロゴ・ブランドガイド | あり/なし | 発注側 | 色、余白、禁止例 |
| 写真・既存映像 | あり/なし | 発注側 | 撮影者、出演者、利用範囲 |
| 台本・話す内容 | あり/なし | 発注側/制作側 | 監修者、禁止表現 |
| 音源・効果音 | 未定 | 制作側から提案 | 商用利用、媒体条件 |
撮影がある場合は、場所の候補を出す人、許可を取る人、出演者へ説明する人、当日の判断者を決めます。岐阜県の2026年度の個別案件では、発注側が場所候補や紹介を行い、受託側が詳細を調整する役割分担が公開されています。これはその案件の条件ですが、民間発注でも責任分担を書く参考になります。
撮影準備のコツ 「撮影場所は当社」とだけ書かず、利用可能な時間、電源・音・照明の制約、映り込む人や物、許可の責任者まで共有します。
納品仕様は媒体・用途・本数・形式をセットで決める
最低限、次を記載します。
- 掲載媒体と、通常投稿か広告か
- 本数と1本あたりの尺
- 画面比率、解像度、ファイル形式
- テロップ、字幕、音声の有無
- UIと重ならない安全領域、カバーや別尺の要否
- ファイル名、版番号、納品日、投稿予定日、データ保管
- 編集可能な元データと使用フォント・素材一覧の要否
具体例として、福岡市の2026年度の個別仕様書は、30〜60秒、9:16、1080×1920、MP4、計15本とサムネイルを条件にしています。岐阜県の個別案件回答も9:16、1080×1920を想定しています。これらは公的な個別案件であり、すべての動画に必要な標準仕様ではありません。
一つの固定仕様ではなく媒体・用途別に分ける
同じ縦型動画でも、通常投稿と広告、TikTok・Instagram・YouTubeで受け付け条件やUIが異なります。2026年8月23日時点の公式情報では、次の差があります。
| 納品先 | 公式情報から確認する項目 | 要件表への書き方 |
|---|---|---|
| TikTok広告 | Non-Spark Adsは縦型9:16推奨・540×960px以上。Spark Ads Pullは公開済みオーガニック投稿を使うため条件が異なる | Spark / Non-Spark、掲載面、広告用CTA、安全領域を分ける |
| Instagram Reels | アップロード比率1.91:1〜9:16、最低30fps・720px | 受け付け条件だけでなく、9:16の共通マスター、カバー、UI安全領域を指定 |
| YouTube Shorts | 正方形または縦長で3分以内。1分超は第三者著作権claimの扱いにも注意 | 尺、音源、字幕、タイトル、公開前の著作権確認を指定 |
仕様は更新されるため、見積もり時と公開前にTikTok広告仕様、Instagram Reels仕様、YouTube Shorts仕様を確認してください。複数媒体への派生設計はショート動画を3媒体へ使い回す方法でも整理しています。
納品設計のコツ まずロゴや重要テロップをUI安全領域に収めた共通マスターを作り、その後に媒体・用途別の尺、カバー、字幕、CTAへ派生させます。「同じMP4を3媒体へ納品」だけでは検収条件が曖昧です。
権利は素材ごとに利用範囲を書く
「権利処理込み」だけでは確認が不足します。次の対象ごとに、誰が許可を取り、どこで、いつまで使うかを確認します。
- 出演者の肖像・実演
- 店舗、施設、私有地の撮影
- 商品、ロゴ、第三者の商標
- 写真、イラスト、既存映像
- BGM、効果音、ナレーション
- 納品動画と撮影素材の二次利用
福岡市の個別仕様書にも、第三者の商標、肖像、著作権への対応と納品物の権利条件があります。契約ごとに条件は異なるため、同じ条項をそのまま使うのではなく、媒体、広告利用、期間、地域、改変、元データの扱いを自社案件に合わせて確認します。
権利の帰属や許諾範囲は、素材と契約条件によって変わります。法的判断が必要な条項は、制作会社の説明だけで完結させず、必要に応じて社内法務や弁護士へ確認してください。
TikTok公式は事業者の商用活動向けにCommercial Music Libraryを案内し、独自音源などを使う場合は必要な許諾を得るよう案内しています。また、ブランド・商品・サービスを宣伝するコンテンツについて、商用コンテンツの開示設定を案内しています。音源の契約と投稿時の設定は、制作時と公開時の両方で確認してください。
POINT 「通常投稿で使える」ことと「広告、Webサイト、店頭でも使える」ことは分けて確認します。将来使う可能性がある媒体は、見積もり時点で候補として伝えてください。
修正回数は段階と定義をそろえる
「修正2回まで」と書かれていても、2人から別々に戻した指示を2回と数えるのか、1回に集約できるのかで進行が変わります。
| 確認段階 | 主な確認内容 | この段階で確定すること |
|---|---|---|
| 企画・台本 | 目的、情報、表現、撮影内容 | 構成と話す内容 |
| ラフ編集 | カット、順序、テロップ | 大きな編集方針 |
| 最終確認 | 誤字、音量、書き出し | 公開可否 |
修正の1回を「発注側が指示を一つにまとめて返す単位」とするのは、双方で合意する定義の一例です。各段階の確認者と期限を決め、台本確定後の企画変更、撮影後の追加カット、承認後の再編集が追加費用や納期変更になるかも確認します。
一枚要件表の記入例
以下は説明用の架空例で、Albitの標準仕様・料金・契約条件ではありません。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 目的 | 新サービスの認知。視聴後に紹介ページへ誘導 |
| 対象者 | 課題はあるが、解決方法を比較し始めた担当者 |
| 媒体・用途 | TikTokの通常投稿。広告利用は別見積もり |
| 本数・尺 | 4本、各20〜30秒。9:16、MP4 |
| 派生納品 | 共通マスター4本。TikTok・Reels用カバー、字幕入り/なしを分ける |
| 素材 | サービス資料、ロゴ、画面素材を発注側が提供 |
| 企画 | 制作側から6案提案し、4案を台本化 |
| 撮影 | 1日、発注側オフィス、社員2名。場所許可は発注側 |
| 権利 | 出演同意は発注側、音源は制作側が候補と条件を提示 |
| 修正 | 台本1回、ラフ2回、最終1回。指示は発注側で集約 |
| 承認 | 広報確認後、事業責任者が最終承認 |
| 日程 | 公開希望日を提示。制作可能日程は提案依頼 |
依頼メールに添えるチェックリスト
- [ ] 目的、対象者、視聴後の行動を書いた
- [ ] 通常投稿と広告利用を分けた
- [ ] 本数、尺、媒体・用途別仕様、希望納品日を書いた
- [ ] 字幕、UI安全領域、カバー、ファイル名、版番号を決めた
- [ ] 支給素材と、その利用権限を確認した
- [ ] 撮影場所、出演者、許可の担当を決めた
- [ ] 企画、台本、撮影、編集、投稿の担当を分けた
- [ ] 修正回数、1回の定義、社内確認日数を書いた
- [ ] 二次利用、利用期間、元データの扱いを確認した
- [ ] 媒体別の派生納品と追加費用を確認した
- [ ] 未決事項を「提案希望」として列挙した
- [ ] 見積もりに含むもの・含まないものの明記を依頼した
外注候補の比較軸は縦型動画制作会社の選び方、社内と外部の工程分担はショート動画は内製と外注どちらを選ぶ?で確認できます。
公開価格と見積もり内訳を確認したい場合は、ショート動画制作の費用相場もあわせてご覧ください。
要件が未整理でも制作相談はできる
すべてを決めてから依頼する必要はありません。決定事項、未決事項、優先順位、媒体・用途の違いが分かれば、制作会社と一緒に要件を詰められます。
Albitの問い合わせフォームで「動画制作(単発・スポット)」を選び、目的、本数、希望時期など、分かる範囲をご連絡ください。
